相談メールがありました。
おひとり暮らしの高齢者A氏の飼い犬について。
A氏(81歳)はがんを患っており、入院による加療が必要。飼い犬3匹が心配で入院をためらっておられる。しかし、最近、食事や歩行も困難となり、「犬さえ何とかなれば、入院したい」という意向を示されている。A氏自身、犬の引き取り手を探したが見つからない。
自分の体調を考えると、早急に入院しなければならず、そのためには、これまで大切にしてきた飼い犬の処分も止む無しと思い悩んでおられる。
犬は以下のとおり
・8歳くらい(雌)黒色、体長約50cm、体高約50cm
・7歳くらい(雄)茶色、体長約50cm、体高約50cm
・7歳くらい(雄)茶色、体長約50cm、体高約50cm
去勢手術、登録、注射等は行っていない、との相談。
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昨日、午後にこの男性のお宅に案内されて犬を見に行きました。
奥さんを亡くされ、長らくおひとり暮らしだったAさんは、行政の支援を受けたがらず、ご自宅の近くのクリニックに点滴を打ちに行くだけだったそうですが、いよいよ犬の散歩もできなくなり、体調不良によりSOSを出してきたようです。
小さな住まいには、雑然としたなかにも盆栽がたくさん置かれ、小鳥や金魚が飼われ、生き物の世話がお好きなようです。
セキをしながら、苦しがって横になっておられました。
引き取り手を探したけれどだめだったから、保健所に連れてってくれと言ってるんだ、帰れ、帰れ、と泣いて怒っていました。
保健所でいいんだ、と。
犬3匹は庭木につながれて吠え立てていました。アンドゥくらいのサイズでしょうか。
まあまあ人慣れしているのはメス。
あとのオス2匹はメスの子どもだそうで、こわがりで、知らない人に吠え立てています。
いったん戻り、帰りにフードを持って寄ってみると、おじいさんがふらつきながら庭木につないでいた犬たちを檻に入れて暑い毛布をかぶせていました。
暖かく、大切にしていました。
檻にはきれいな水が入っていました。
苦しそうにセキをしながらタバコをふかし、もう死ぬんだから、と自暴自棄になっているようでした。
すぐにも入院したい、とのことですが、生き物を抱えて、動けない、ということです。
硬直した態度に戸惑いました。
保健所に頼んでいい、と。
翌日、八間堀さんが一緒に世話に来てくれました。
年が近いし、盆栽や小鳥や金魚など、生き物の世話がお好きな点も共通している。
私には心開かなくても、八間堀さんなら。
オス2匹は、狂ったように吠えていた前日とは違い、慣れてきて首輪にも触らせて、散歩も難なく出来ました。
餌と水と散歩。
焼きイモを渡すと、Aさんは、八間堀さんと私に怒鳴り散らし、帰れ帰れと怒鳴りました。
俺はもう、からだがダメになった、と。
お前たちは何を企んでいるだ、と。
犬は保健所に、と。
私たちがここで交代で犬は世話に通うから、おじいさんは病院に行って治しましょうと。
怒ってばかり。
でも翌日から、八間堀さんがミカンを持ってまた犬を世話しに行くと、Aさんは、頼むよ、とコタツから手を伸ばして受け取ったそう。
様子が変わり、少しずつ、心開いてきたようです。
生かすことはお金や時間や手間がかかるけれど、
場所さえ確保して、工夫してみんなで手分けしたら、
もう絶対に、生かせます。
自治体職員さんには心ある人もたくさんいます。
誰も殺したくないから。
センターや保健所に行けば殺される、と、みんな諦めている、これがそもそもおかしい、殺す場所ではない、本来は。法律をみても、緊急避難的な保護場所であるべきです。
処分とは、返還と譲渡。
殺すために、引き取りはしてはならないはず。
老いや病で倒れる方たちが残していく動物たちの問題が、最近は特に、重くのしかかります。
by 鶴田おかめ
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相談事例から 犬3頭を関係者みなで生かす
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