ボローニャの守護聖人、サン ペトロニオの名を冠する大聖堂が、町の中心にあります。その扉部分には、旧約聖書を題材にしたヤコポ デッラ クエルチャのレリーフがはめ込まれています。これらは若きミケランジェロにも多大な影響を与えた、ルネサンス彫刻の傑作です。
創世記6章にノアの方舟の一節がありますが、そのシーンを描いたのがこのレリーフです。
方舟に乗って命を助けられた善人ノアの家族と、雌雄のあらゆる動物たち。大洪水が終わったかどうか知るため、ノアは鳩を放します。
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彼は更に七日待って、鳩を放した。鳩はもはやノアのもとに帰って来なかった。
ノアが六百一歳のとき、最初の月の一日に、地上の水は乾いた。ノアは箱舟の覆いを取り外して眺めた。見よ、地の面は乾いていた。
第二の月の二十七日になると、地はすっかり乾いた。
神はノアに仰せになった。
「さあ、あなたもあなたの妻も、息子も嫁も、皆一緒に箱舟から出なさい。
すべて肉なるもののうちからあなたのもとに来たすべての動物、鳥も家畜も地を這うものも一緒に連れ出し、地に群がり、地上で子を産み、増えるようにしなさい。」
そこで、ノアは息子や妻や嫁と共に外へ出た。
獣、這うもの、鳥、地に群がるもの、それぞれすべて箱舟から出た。
旧約聖書 創世記より
人や動物が、方舟から大地に降りたったときの、劇的シーンを捉えた、その力強さ。躍動感。
それまで方舟に閉じ込められて、食糧も尽き、先も見えずにただ水に漂うしかなかった人々の胸の内には、まず安堵、希望そして、やむにやまれぬ自由への希求が込み上げてきたことでしょう。
その彫刻のレプリカ複製が、ボローニャ市営シェルターの正面を飾ります。
「獣、鳥、それぞれすべて箱舟から出た」
そこから、すべて狂ってしまったのでしょう。
等しく助かり、等しく大地に歩みだした、
人と動物のはずだったのに。
飼い主不明の猫の問題解決には、基本的にはTNRにより手術をしてリリースし数を減らしていく、いわゆる地域猫によるのですが、リリースできない虐待された猫や、交通事故により怪我をした猫などが、シェルターに入ってきます。
ワクチンは必須です。
また、繁殖防止のために、避妊去勢手術は必ず行います。
エイズと白血病のウイルス検査も必須です。
白血病の猫は別施設へ移るため、こちらの市営シェルターにはおりません。
エイズ陽性の猫と、ウイルス陰性の猫はエリアも完全分離。
また、人に慣れた猫と慣れていない猫とをも分けています。慣れていない猫はストレスを与えぬよう、庭付き猫舎へ。天井部には脱走防止フェンスが。ケージ管理でなく室内フリー、ガーデンフリー。
「私を捨てないで。信じているから」の遺棄防止ポスター。
イタリアはずっと犬猫殺処分ゼロ。
野犬や乳飲み子やシニアやハンディキャップのある子を殺処分することは違法です。
生かしていることがかえって苦痛となるような、病末期の犬猫の安楽死のほかは、殺処分は、認められていません。
基礎自治体、つまり市区町村コムーネごとに、公的なシェルターがあります。
運営資金は国、州からも予算がついています。
土地と建物は市が提供。
トレーナーさんや獣医師や有償スタッフも市が雇用。
市が出来ない場合は、動物保護の全国組織、ENPAがスタッフ数名を送り込みます。
自立した自治体では、ENPAでなく、独自の保護団体が自主運営しています。ボローニャなど。
シェルターで大切なものは人手です。行政による雇用により、しっかりとマンパワーが確保されています。そこにボランティアさんが入りますので、飼養体制もしっかりとし、お世話の質も、安定しています。
常にボランティア募集。
志願者は、決まった曜日に講習を受け、試験に合格すると、8000円くらい支払ってパスカードを受け取ります。その費用には保険も含まれます。咬傷事故や脱走に対応できるよう、保険加入は義務づけられています。
皆さんイキイキと世話をされています。数十年も通っている人も。動物から元気をもらっているそうです。
必ず、避妊去勢。
定期的な、ワクチン、ノミダニ駆除。
譲渡費用はゼロか、3000円くらいまで。
民間に丸投げでなく、行政がきちんと予算さえ付ければ、殺処分ゼロは可能だし、雇用の創出になります。
ウン億円かかる道路一本を来年度に回せば、シェルターに予算をつけるのも簡単なことです。
この動物保護分野で働きたいと考える若者は、少なくないのです。
周辺にショップやカフェやドッグランを併設すれば、地域経済も活性化します。
殺処分ゼロは、具体的に、達成できるのです。
by 鶴田おかめ