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動物虐待と法律

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「動物虐待と法律」





2019年6月1日

                      弁護士 坂本博之

 


1 動物愛護法の規定


・正式名称は「動物の愛護及び管理に関する法律」

・1条(目的) この法律は、動物の虐待及び遺棄の防止、動物の適正な取扱いその他動物の健康及び安全の保持等の動物の愛護に関する事項を定めて国民の間に動物を愛護する気風を招来し、生命尊重、友愛及び平和の情操の涵養に資するとともに、動物の管理に関する事項を定めて動物による人の生命、身体及び財産に対する侵害並びに生活環境の保全上の支障を防止し、もつて人と動物の共生する社会の実現を図ることを目的とする。


・2条(基本原則)

1項 動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。


2項 何人も、動物を取り扱う場合には、その飼養又は保管の目的の達成に支障を及ぼさない範囲で、適切な給餌及び給水、必要な健康の管理並びにその動物の種類、習性等を考慮した飼養又は保管を行うための環境の確保を行わなければならない。


・44条(罰則)

1項 愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、二年(新、五年)以下の懲役又は二百(新、五百万)万円以下の罰金に処する。


2項 愛護動物に対し、みだりに、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、又はその健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束することにより衰弱させること、自己の飼養し、又は保管する愛護動物であつて疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと、排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であつて自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管することその他の虐待を行つた者は、百万円以下の罰金に処する。


3項 愛護動物を遺棄した者は、百万円以下の罰金に処する。


4項 前三項において「愛護動物」とは、次の各号に掲げる動物をいう。

一 牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる

二 前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの

 

2 虐待とは何か

・動物愛護法44条2項(前掲) 動物虐待は犯罪である。


・児童虐待においては、虐待に4類型あるとされている(児童虐待防止法2条)


①身体的虐待(児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること)


性的虐待(児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること)


③ネグレクト(児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること)


④心理的虐待(児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと)


☆児童虐待に関しては、「児童虐待罪」という犯罪はない。


ネグレクトについては、動物愛護法の方が、児童虐待防止法よりもより具体的に例示されている。→動物に対するネグレクトは、虐待であるという認識が一般に低いためか?


・阿見町のブリーダー事件 犬猫多数が皮膚病等に罹っていたにも拘らず、治療を怠っていたことで、有罪となった。警察署は、環境省に意見を聞きながら、立件した。

 



3 虐待を発見した場合の対応


・証拠を固めることが大切 ex.写真を撮る、加害者や証人の発言を録音する、動物をもし確保できたらすぐに獣医に連れて行って診断書を書いてもらう


・動物虐待は犯罪なので、警察に通報する。場合によっては、告発をする。告発をした場合は、警察は、その結果がどうなったか、告発人に通知する義務がある。


→しかし、警察は、一般の刑事事件でも、告訴・告発に対して、非常に後ろ向きな態度を執ることが普通。特に、普段件数が少ない犯罪については、さらにその傾向がある。動物愛護法違反もその例に漏れないから、告発する場合は、無理やり告発状を置いてくるとか、告発をした後も頻繁に問い合わせをするなど、警察の尻を叩いてやる必要がある。


→但し、ネットなどで既に大きく問題視されたような事件については、比較的すんなり告発を受理するようである。

Ex.白馬村猫溺殺事件


→一方、行政による虐待に対しては、警察は、殆ど当てにならないことが多い。それでも、警察官を叱責して、やらせるべきである。このようなことの積み重ねが、世の中を変える礎となる。

Ex.熊本県職員等猫虐待死事件


動物虐待を行っているのが、ブリーダーや販売業者の場合は、県の動物指導センターに対して、第一種動物取扱業の登録取消を求める。


→しかし、県の指導センターの腰は非常に重いことが通例なので、喧嘩も辞さないくらいの心づもりをする必要がある。


・ネットで動物虐待の動画を配信しているのを発見したら、そのページを保存し、或いは印刷して証拠を保存する。この場合、最寄りの警察署に通報・告発する。


→カルおじ事件

 

4 虐待を受けている犬猫の救助

現在の日本の法律では、虐待を受けている動物を助ける規定がない。飼主の所有権の方が、動物の生命よりも大切だ、というのが日本の法律体系である。


→動物愛護法1条は、動物の生命を守ることを目的としているのではなく、動物愛護の気風という健全な社会を守ることが目的となっている。


→動物愛護法の根本的な改正が必要である。

・虐待を受けている動物を助けるためには、虐待者(飼主)に、動物の所有権を放棄させる必要がある。


・どうしても主が放棄しない場合には、「緊急避難」として、勝手に連れてきてしまうことが許される場合がある。


・虐待を受けている動物がノラ犬、ノラ猫の場合は、その場で救助をすればいい。また、このような場合、動物愛護法違反の現行犯となるから、迷わずに写真を撮り、状況を録画し、警察に通報すべきである。


・救助した動物を保護する場所は、現状では民間団体、個人宅となる。


→しかし、本来は、県の動物指導センターにこのような施設を作るべきである。県の動物指導センターには、このような施設を作るだけの場所的余裕は十分にあるし、予算の確保もできるはずである。


→市町村においても、動物愛護条例等を制定し、その中で、虐待を受けた動物の収容施設を造ったり、災害時の同伴避難ができるような場所を予め確保するということを行うことも考えられる。皆さんが居住する市町村にぜひ働きかけてください。

 

5 動物虐待関連のいくつかの問題

・動物実験は、動物虐待の典型だろうと思われるが、現在の動物愛護法では殆ど闇の中に置かれている。


・畜産動物の虐待についても、殆ど外部に出てこない。内部告発が必要。


・現在でも三味線には猫の皮が使われている(津軽三味線や安物には犬の皮が使われているようだ)が、その流通経路は全く闇の中になっている。


・奄美大島で行われている「ノネコ」の駆除について


→犬猫は、動物愛護法上、人に飼われていないイヌやネコ(一般に、ノラ犬、ノラ猫と言われる)も、愛護動物として、みだりに殺したり虐待したりしてはならない。特に猫は駆除などをしてはならない(ノラ犬は、狂犬病予防法によって駆除の対象となる)。


→鳥獣の保護及び狩猟に関する法律(鳥獣保護法)上、野生動物としての「ノイヌ」「ノネコ」は狩猟対象となる(日本には、在来の野生動物としての猫(ヤマネコ)は存在しない。犬の場合は、在来の野生種としてのヤマイヌ=ニホンオオカミがいた(る?))これが、ノネコ駆除の根拠だろうと思われる。


→駆除をする理由は、奄美大島の独特の生態系、奄美大島の固有種を守るため、ということだと思われる。因みに、オーストラリア等、猫を侵略的外来種と捉えている国も少なくない(日本では、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律を制定しているがこの法律上、猫は特定外来生物に含めていない)。


→「ノラ犬」「ノラ猫」と、「ノイヌ」「ノネコ」の違いは、「元来は家畜でございましたものが野生化いたしまして山野に自生いたしまして、野山におるというのを」ノラ犬、ノラ猫と区別してノイヌ、ノネコという、というのが、農林省の見解


→しかし、「ノラ犬」と「ノイヌ」、「ノラ猫」と「ノネコ」と言うのは、全く同じ種類の動物である。


→鳥獣保護法上、狩猟動物としての「ノイヌ」「ノネコ」は、削除すべきであろうと考える。






by ヤマネコ

 


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