2016/8/12
常総警察署長 殿
茨城県警察本部長 殿
警察庁長官 殿
国家公安委員会委員長 殿
全国動物ネットワーク(ANJ)&
NPO法人動物愛護を考える茨城県民ネットワーク(CAPIN)事務局
代表 鶴田真子美
動物愛護法について警察官に対して周知徹底されていないことについての抗議文
私どもは、茨城県南を中心に犬猫たちの保護をしているNPO法人で、CAPINと申します。2008年に設立し、本部はつくば市にあり、保護シェルターは土浦市と常総市にございます。小さくとも命ある犬猫が捨てられるたび、当会には電話やメール相談が市民から届き、日々、東奔西走して保護に動いております。
動物の愛護及び管理に関する法律(以下「動物愛護法」と言います)第44条第2項には、次のような規定があります。
第44条
2 愛護動物に対し、みだりに、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、又はその健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束することにより衰弱させること、自己の飼養し、又は保管する愛護動物であつて疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと、排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であつて自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管することその他の虐待を行つた者は、100万円以下の罰金に処する。
4 前3項において「愛護動物」とは、次の各号に掲げる動物をいう。
一 牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
二 前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの
しかし、これが現場の警察官にはあまり知られていません。動物愛護法での立件は滅多にないからです。そして、上記の条文の「虐待」について、殆どの警察官は理解しているとは言えない現状にあります。
ところで、6年前の平成22年には、環境省により、以下のように「虐待」の定義づけが明確化されました。
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飼育改善指導が必要な例(虐待に該当する可能性、あるいは放置すれば虐待に
該当する可能性があると考えられる例) について
環自総発第 100205002 号
平成2 2 年2 月5 日
環境省自然環境局総務課長から各都道府県・指定都市
・中核市動物愛護主管部( 局) 長あて
動物愛護管理行政の推進については、平素より格段の御協力をいただき、厚
く御礼申し上げます。
さて、虐待の定義の明確化については、担当者会議等において貴県市より御
意見をいただいているところです。虐待に該当するかどうかについては、行為
の目的、手段、苦痛の程度等を総合し、社会通念により判断してきているとこ
ろですが、より具体的にしていくためには判決事例を収集、把握していくこと
が重要であると考えています。そのため、平成 19 年度に判決事例を「動物の
遺棄・虐待事例等調査業務報告書」として取りまとめました。
今般、この報告書をもとに、飼育改善指導が必要であり虐待に該当する可能
性、あるいはそのままの状態で放置されれば虐待に該当する可能性があると考
えられる事例を別紙のようにまとめましたので、業務の参考にしていただくよ
うお願いいたします。
なお、より詳細な説明を環境省ホームページにも掲載していますので、御参
照ください(http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h1903.html)。
虐待の判決事例については、今後も継続して収集していくこととしており、
これを踏まえ、別紙の事例につきましても逐次見直していきたいと考えており
ます。
また、以下の点にも御留意ください。
○ 本通知は、可能な範囲で具体的な事例を示したものであり、個々の案件
に係る判断は、動物及び動物の所有者又は占有者の置かれている状況等を
考慮して個別に行われるべきものと考えます。
○ 別紙の事例については、後日、増刷し、各自治体あて発送予定の「動物
の遺棄・虐待事例等調査業務報告書」(平成 19 年度)とともに警察にも情
報提供していただき、引き続き連携して対応していただきますようお願い
いたします。
( 別紙)
Ⅰ 動物の虐待の考え方
積極的(意図的)虐待ネグレクト
やってはいけない行為を行う・行わせるやらなければならない行為をやらない
・殴る・蹴る・熱湯をかける・動物を闘わせる等、・健康管理をしないで放置
身体に外傷が生じる又は生じる恐れのある行為・・病気を放置
暴力を加える・世話をしないで放置など
・心理的抑圧、恐怖を与える
・酷使など
※動物自身の心身の状態・置かれている環境の状態によって判断される。
Ⅱ 飼育改善指導が必要な例( 虐待に該当する可能性、あるいは放置すれば
虐待に該当する可能性があると考えられる例) について
1 . 一般家庭
・餌が十分でなく栄養不良で骨が浮き上がって見えるほど痩せている(病気の場合は獣医師の治療を
受けているか。高齢の場合はそれなりの世話が出来ているか。)。
・餌を数日入れ替えず、餌が腐っていたり、固まっていたりして、食べることができる状態ではな
い。
・器が汚く、水入れには藻がついている。あるいは、水入れがなく、いつでも新鮮な水を飲むこと
ができない(獣医療上制限されているときを除く)。
・長毛種の犬猫が手入れをされず、生活に支障が出るほど毛玉に覆われている。
・爪が異常に伸びたまま放置されている。
・(繋ぎっぱなしで散歩にも連れて行かず、)犬の糞が犬の周りに何日分もたまり、糞尿の悪臭がする。
・外飼いで鎖につながれるなど行動が制限され、かつ寒暑風雨雪等の厳しい天候から身を守る場所
が確保できない様な状況で飼育されている。
・狭いケージに閉じ込めっぱなしである。
・飼育環境が不衛生。常時、糞尿、抜けた毛、食餌、缶詰の空やゴミがまわりにちらかっており、ア
ンモニア臭などの悪臭がする。
・病気や怪我をしているにもかかわらず、獣医師の治療を受けさせていない。
・リードが短すぎて、身体を横たえることができない。
・首輪がきつすぎてノドが締めつけられている。
・しつけ、訓練と称するなどし、動物に対し殴る、蹴る等の暴力を与えたり、故意に動物に怪我をさせたり
する。
・事故等ではなく、人為的に与えられたと思われる傷が絶えない。
2 . 動物取扱業者等
・ケージが狭く、動物の排泄物と食餌が混在した状態で放置されている。動物が排泄物の上に寝てい
る。
・常時水を置いていない。あるいは、水入れはあるが中に藻が付いていたりして不潔である。
・幼齢にもかかわらず、食餌を適切な回数与えず(例えば朝晩の2回のみ等)、また、それで問題ない
と説明している。
・糞尿が堆積していたり、食餌の残渣が散らかっていたりして、清掃が行き届かず、建物内、ケージか
ら悪臭がする。
・動物の体が著しく汚れている。
・病気や怪我をしているにもかかわらず、獣医師の治療を受けさせていない。
・飼育環境が飼育している動物に適していない(温度・湿度の調整も含む)。例えば、 西日が当
たるなど建物内の温度が上昇した場合、あるいは、その逆で、冬季に低温となった場合に対応し
ない。
・多頭飼育で、飼育環境が不衛生。常時、糞尿、抜けた毛、食餌、缶詰の空やゴミがまわりにちらか
っており、悪臭がする。
・ケージ内で動物を過密に飼育している。
・店内の大音量の音楽、または過度の照明にさらされることにより動物が休息できない。
・しつけ、訓練と称するなどし、動物に対し殴る、蹴る等の暴力を与えたり、故意に動物に怪我を
させたりする。
・体調不良、不健康な動物をふれあいや散歩体験等に使用する。
・出産後、十分な期間(離乳し母体が回復するまでの間)を経ずに、また繁殖させる。
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また、2012年の動物愛護法改正では警察との連携が盛り込まれ、施行に際して警察庁から都道府県警察や警視庁にも通達が出されました。
しかし、いざ愛護動物が虐待を受け、警察官に相談しても、犯罪として扱っては下さらず、書類に残さないことがほとんどです。これでは虐待防止になりません。当会では、虐待や遺棄の通報をするときには、動物愛護法や過去の書類送検事例のコピーを持ち歩き、警察官にそれを説明しながら、実際に動いて頂けるように働きかけをしています。
平成28年8月11日、私たちは茨城県常総市坂手地区の、2頭の馬への虐待「長期にわたって水がない、あるいは藻が付いて熱くなった汚れ水が交換されずに放置されている」件について、常総警察に通報をしました。警察はパトカーを向かわせてくださいましたが、残念ながら、虐待とは取り扱わず、飼い主の話のみを真に受けて、餌と水は与えている、これ以上、馬には近寄らないように、と、片付けてしまったのです。
平成27年春より、ここに2頭の馬が飼育されていることは当会は理解していました。
平成28年3月より、たまたま通りかかった会員が、馬に水がないことに気づき、飼い主に与えるようお話しをしました。が、夜に与えている、とのこと。
それ以降、いつ行っても水はない状態が続いていました。
これまで、二度、飼い主に苦情を言いました。
また、三度、水を運んで馬に与えました。
平成28年8月6日(土)に、2頭の馬の飼育場に行くと、何ヶ月前に変えられたかわからないような、苔のようなものが入った緑色の太陽に暖まったお湯が入った容器しかない状態でした。飼い主らしき男性がやってきて、黙って草刈りカマで草を刈りだしました。これでも馬が水を飲めないので、水を変えて下さいと話すと、
「だったら見えないところで飼うしかねえな、こっちは仕事をしてるんだよ」
と、おっしゃいました。
夏の炎天下に水が飲めない、これでは死んでしまいます、と訴えても、「社長にいっておくよ」と言うばかりでした。
8月8日(月)、茨城県動物指導センターに電話をし、この馬のいる場所をお伝えし、飼育の指導を求める電話をかけました。
8月11日(木)に、当会会員が見に行くと、改善されておりませんでした。そこで、常総警察に電話をして相談をしました。警察署には、これまでの経緯をお伝えし、まったく改善がないことを伝えました。
パトカーで駆けつけた警察官は、飼い主の話のみに耳を傾け、餌も水も与えている、ここには近寄らないように、との指示を私たちに出したのみでした。
水を充分に与えられていない馬は、言葉を持たず、自分で訴えることはできません。このように喉の渇きに苦しむ状態を放置できるものでしょうか。
この日本の社会も成熟し、やがては、動物を命あるものであることに鑑み、これをみだりに苦しめ虐待をしてはならない、と法律を定めたのです。第44条で、ネグレクトを含む動物虐待を、犯罪として立法化したのです。動物愛護法に則って、今回の馬の水の件を「愛護動物への虐待」、犯罪として、警察が適切に取り扱ってくださってくださらなかったか抗議いたします。
社会全体が、愛護動物への虐待は犯罪であり、水を与えないことも許されないことである、と捉えないと、いつまでも、人は動物を粗末に扱い苦しめます。警察の「違法」「犯罪」の判断は、こうした遺棄の抑止になります。日本は法治国家ですのに、法律があっても警察が動かないようではいけません。
人と動物の共生、命へのやさしさを土台にする社会を目指して、今回のようなご判断が二度と再びなされませんよう、動物愛護法における動物の「虐待」の意義についての,警察官に対する周知徹底をお願いを申し上げます。
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動物愛護法について警察官に対して周知徹底されていないことについての抗議文
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