10月1日の木曜、天皇陛下が常総市を慰問されたため、茨城県警や警察署もてんやわんやの大騒
ぎでした。小学生が集団で県道にずらりと並んでいました。腕章をつけた警備の私服
警察がどこにでもいました。
そのなかで、私たちはいつもの活動(被災犬を預かり様のもとへお届けしたり、放浪
被災犬を動物病院から引き取ったり、常総警察に拾得物(犬)の届けをしたり、野犬
シェルターのお世話をしたり、TNRの猫を運んだり)を淡々とやっていました。やまちゃん。陽気で素直だが、引っ張り強く、昼間はキドックスさんでトレーニング中。
常総ハヤトはやっと首もとを触らせるようになりましたが、まだまだ人がこわいです。
被災された方からお預かりしているかいくんです。扱いが難しい噛み犬で、スイッチが入るために、決まったスタッフのみがお世話します。
ハラス
マリーちゃん
ジョー
ハニー
ハコ
第一と第三木曜は、野良猫の集団手術の日。
稲垣動物病院の先生方が
じきに到着されます。
6時前から猫さんを連れて受け付けに来られる方もいらっしゃいます。そと猫にご飯をあげて頂きました。
内守谷の預かり様、mk様のお宅に、被災犬ゆりちゃんをお届け。
ゆりちゃんのご家族はまだ避難所からおうちに戻れません。
冠水がひどかった場所で、帰宅までまだ時間がかかります。
あたたかく迎え入れて下さる皆様に感謝です。
毛布が気に入って遊んでいて写真撮れなかったゆりちゃんです。常総警察に、保護犬の届け出をします。
物々しい警備のなか、常総シェルターに移動し、さぶたちのお世話をします。
さぶは、このあたりの群れのリーダーだったようです。
残りも早くつかまえて野犬ゼロにしたいものです。
この頃は日も落ちるのが早く、どんよりと雨が降り、夜には徐々に風も強くなってきました。
暗くなったシェルターは、寂しくて辛いですが、あーちゃん、アグリさんのs様と、この日は3人もいました。
周辺の捕獲器に餌をセットしながら、馬にニンジンを運び、気になっている犬の鼻を確認に行きます。それから社協避難所からお預かりした猫3匹の飼い主様に物資を届けました。
みな元気にしていました。
このあたりの野良猫さんはつかまえて手術しましょうと話しており、さっそく捕獲された黒猫さんを引き取り、当会シェルターに急いで戻るも、集団手術はすでに終了。稲垣先生はこのまま連れ帰り、翌日に越ヶ谷へお迎えすることになりました。
新たな被災放浪犬が当会にやってきました。
被災犬として病院にいたのですが、長くなるのでセンターに移送されるところでした。
センターにお願いしてワクチンだけは急いで打って頂きました。
ビーグルミックスの老犬、穏やか、茶色の細い革首輪、寄り添うし、吠えない、仮称マーブルくん、当会シェルターに到着してすぐ、集団手術でお疲れの稲垣先生に、採血して頂き、フィラリアの検査をし(陰性だった!)、ドロンシットを打って頂きました。犬に慣れたスマイルさんが、がっしと抑えこみ、無事に急ぎの医療が終わりました。
警察に届けを出しました。とても飼いやすい性格のよい犬です。飼い主さんとはぐれたかな。
早くおうちに戻れますように。
この夜は天気も荒れました。暴風のなか、放浪犬や迷子になった猫たちは、どう過ごしているだろうと思います。
<命のリレー>
常総で保護した子犬たちは24匹にのぼり、そのうち4匹と成犬2匹を大阪の北山奈津
子さんチームが、2匹を青森のワンニャンを愛する会様が、2匹を川崎の結様が、3匹
を町田の小さな命を守る会様が、快くお引き受けくださることになり、高速や飛行機
を使って、リレーでお届けとなりました。また、常総猫は4匹、大田区の中村光子さ
んがお引き受けくださいました。信頼できる団体さんを通じて、常総地方の犬猫の譲
渡のご協力が得られております。北山様、敦賀様、結様、猫のマリア中村様、其木
様、ほかたくさんの皆様に、心より感謝申し上げます。
<県南の被災動物の実態は見えてこない>
常総からは、放浪犬や猫の手術の相談も当会に寄せられます。茨城全体が、もともと
野犬や野良猫の多い地域ですので、水害のあるなしに拘わらず、繁殖と遺棄には終わ
りがありません。
被災動物の実態については、停電等のため市役所も電話が不通であり、かけてもつな
がらず、情報を得にくいです。(人間のことでですら、情報がまばらなのです。機能
不全。特に障がいをお持ちの方には公的支援も情報も届かない状況で、これも改善に
向けて情報収集など複数の全国規模のNGOと協働しています。)
・水害エリアの飼育総数(犬の登録数から飼育数を推測するしかありません)はどう
なのか。このあたりの情報は、県でなく市が把握しています。登録は市役所だからです。
・被災動物がどれほど避難でき、どれほど亡くなり、または不明となったのか。
・どこに避難した(している)のか。避難所、友人宅、親戚宅、動物病院、愛護団
体、ペットホテルか。
・いつごろ自宅に戻れそうか。
・産業動物や学校飼育動物の被害の実態はどうか。
今は、個別に歩いて聞いて回るくらです。が、清掃などでお忙しい住民の方に声をお
かけするのもはばかれます。
農家はだいたい番犬を飼っています。水没したエリアの犬がどうなったか、つらい話
も耳にします。
<飼い主不明の犬>
被災動物は獣医師会所属の動物病院(常総市、つくば市など)が無料で預かることに
なっていましたが、いまやどこも満杯のために、飼い主不明であるものは、動物病院
からセンターに送られることもあります。飼い主不明の犬はセンターに収容されても
無期限で飼養されるわけでなくただ処分が伸びるだけ、とセンターから聞いていま
す。被災動物は処分しないはずですが、これではどうなるかわかりません。ここは平
時でも野犬が多いのです。
警察に届けて飼い主さんをさがし、3ヶ月後に所有権をとり、飼い主さんが出てこな
ければ手術して譲渡する、という救済措置しかありません。老犬や咬傷犬ですと時間
もかかり、譲渡は困難です。
預かりボランティア様の役割は大きいです。
こうした問題に理解をお持ちで、犬の問題行
動への対処ができ、ある程度の経験も積んだご家庭が必要です。
<住民の意識にばらつきがある>
災害時には、個々の住民の動物に対する意識がよく見えてきます。
「番犬、犬畜生なんだから、死んでもしかなねえっぺよ、人がたいへんなんだからそ
れどころじゃあんめえ。常総には犬猫の問題はねえんだ、だれも困ってねえ。」
何度きいたことでしょう。
ワクチンも登録もされず、フィラリア予防もされず、記録にも残らないまま水没した
犬たち。助からなかった外飼いの子猫たち。田んぼの泥のなかに、流された猫のなき
がらが埋もれていたとの話もよく聞きました。成猫は塀や屋根に登って助かっても、
子猫は無理です。場所によっては水の流れが速く、車も100m流されていますの
で、動物はいっせいに水に飲まれたと思います。
日系ブラジル人の家族は、おおむね同行避難をされています。避難所にも犬を連れて
現れました。ペットでなく家族として扱う姿勢です。
日本人でも、きちんと飼って、いっしょに避難された方はいらっしゃいます。
避難所で断られ、いっしょに家に残った方もおられます。車のなかや、ほんとうなら
住めない家に、犬猫を置いて仕方なく暮らしている方があります。
日本人には、迷惑をかけられないという気遣いが強く、飼い主さんが我慢してしま
う、という傾向がありますので、余計に動物の問題が表に出てこないのです。
飼っていない人、嫌いな人の声ばかりが大きくなりがちです。が、飼育している方が
萎縮して同行避難できない、というのは、おかしな話です。
どこにも行き場がなかったときに、預かりをお願いできて、助かった、との声がじっさいにあるのです。最初から、飼い主さんが犬猫ペットとともに安心して避難できる行き場をつくっておけ
ば、被災者は同行避難すると思うのです。これは、動物だけでなく、障がいをお持ち
の方や、赤ちゃんや老人を抱えた家族にも言えることで、配慮されるべき対象家庭か
と思います。
<公務員の意識にも、ばらつきがみられた>
「犬猫の物資なんて邪魔だ、場所ふさぎだ」
という公務員もあった一方で、被災動物にも理解を示し柔軟に対応くださった公務員
もおられました。
公式にはペット不可であっても、建物の中に入れてもらえた避難所、外につながせて
もらえていた避難所、納屋に仮置きされていた避難所。
避難所の受付担当者により、現場ごとに判断が分かれていました。
堤防決壊の日、最初に「避難所は一律ペット不可」と常総市の災害対策本部が出した
方針が、あらゆる意味で、問題です。
そしていま、茨城県は公営住宅はすべて「ペット不可」としています。
<向かいたい方向>
災害はどこにでも起こりうるので、動物を受け入れる避難所を、小さい建物、古い建
物でよいので、一箇所でも事前に決めておき、同行避難を望む住民に伝達できるよう
にしておけないか。
行政と地元のNPOがそこに支援に入り、家庭での預かりマッチングや迷子に関する情
報収集をします。医療や看護サービスもそこにいけば受けられるようにします。
地元の獣医師さんも被災するので、県の獣医師会は、週末にも事務所を開けて対応可
能な態勢をとるべきです。
今回は、人間優先で、ボートに犬猫がのせて貰えなかったので、動物専用のレス
キュー部隊があってボートやヘリを所有し簡易テントを組み立てシェルターを作るな
ど、ふだんから備えがあれば、どんなによいかと思いました。
お金だけ集めて後で配分しても、保護や収容には間に合わないです。
備えて、練習して、日頃からネットワークをつくっておかねばなりません。
ピースボートさんや震つなさんなど全国規模の災害関連NGOと繋がれば、動物搬送の
ルートも確保でき、ボラセンと繋がって支援も受けられます。動物だけでなく、人間
の支援のネットワークとの繋がりのなかで、これからは動いていくのを目指すべきと感じました。
By おかめ
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常総被災動物支援の現場から
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