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Channel: CAPIN(キャピン)公式活動報告
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WSPA による野良犬対策マニュアルを、常総野犬対策に!(2)

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費用問題▲目次へ戻る
多くの行政組織が人道的な野良犬対策を積極的に行なおうとしない背景には、費用の問題があります。しかしながら、効果が期待できないような対策を施すことによって生じる被害 – 例えば、交通事故、犬の咬傷事故、保健衛生上の問題(狂犬病など)、捕獲して殺処分にする費用、野生動物や家畜がこうむる被害 – などにかかる費用を考えると、対策をとらないことによって節約することは意味がないことがわかります。 イギリスで1996年に野良犬対策にかかった関連費用は、警察が野良犬に対処するのに要した費用が1500万ポンド、地方自治体が動物捕獲要員にかけた費用が1100万~1600万ポンド、交通事故に関連した被害が1800万ポンド、犬によるケガの治療費として900万ポンド、犬による家畜の被害が200万ポンドにものぼります。ところが重要なことは、動物保護員にかける費用は増加したにもかかわらず、このような費用総額は8年前の額より総額で1000万ポンド減少しているということです。効率の良い対策に投資した対価といえるでしょう。 将来的な見通しを持った対策に要した費用は、犬を登録させて登録料を徴収することで補填できます。避妊・去勢を推し進めるために、避妊去勢手術を行なった犬の登録料は引き下げ、収入の少ない年金生活者などの低所得者にはそれなりの便宜をはかります。

効果的な対策▲目次へ戻る
効果的な対策を行なうには、包括的でかつ将来性のある計画をたてる必要があります。このような計画には、現時点での飼い主および将来的に飼い主になる可能性のある人達への飼い主教育、飼い犬の出産制限、飼い主がいない犬の保護環境の整備、登録と標識着用の義務づけ、ブリーダーやペット販売業者の認可制度などが含まれます。そして、この計画を効果的に運用していくことが肝要になります。このような対策を成功へ導くためにはどこに重点を置いたらよいかを詳しくみていきます。また、このような対策について法律でどのように規定していくのがよいかを付録2に示します。

啓発▲目次へ戻る
地方自治体(市町村)は、ペットを所有することに伴う責任についての啓発を行ない、市民の責任意識を高める努力をします。また、可能な限り、動物愛護団体や地元の獣医を巻き込んでいきます。重要な点は、避妊・去勢の促進、ペット動物の必要性を説くこと、ペットを世話し責任を負うことを理解してもらうことです。すでにペットを飼っている飼い主が責任を持って飼うよう意識の向上を図ることが目的の一つです。衝動的にペットを飼い始めることのないように啓発していくことも必要です。 また、啓発用の資料には、飼い主には法的な責任があることも強調しておきます。 啓発活動には、広く配布できるような様々な印刷物やパフレットの作成も含まれます(例えば、動物病院、図書館、交番、犬の登録センター、犬の雑誌へ掲載、動物愛護団体やドッグブリードクラブの会員に配布)。既存の啓発用資料でよければ、WSPAに申し込めば入手できます。図書館やドッグショーなどで展示できる啓発用の資料も用意します。また機会があれば、マスメディアに活動を取り上げてもらうことも必要です。 犬を捨てようとしたり世話をしないなどの問題が起きたときには、実際に動物を保護する担当者が啓発活動をします。保護された野良犬の元の飼い主がみつかったような場合は、保護担当者が啓発活動を行なう絶好の機会です。

犬の登録と標識着用▲目次へ戻る
犬の登録と標識着用は、野良犬対策を成功へ導くためには必須条件です。狂犬病予防注射の義務付けのような保健衛生上の対策は、犬の登録と標識着用が徹底していないとうまく運用できません。 登録は個々の犬の記録をとる制度で、飼い主の詳細とともに登録簿が作成されます。どのような登録制度が一番有効かは、国によって違います。中心になる登録用コンピューターがあり、国中からそこにアクセスできるようにする場合もあります。もし大きい国ならば、地方ごとの認識コードを設定するシステムにすればいいでしょう。犬には、登録簿に記録された標識あるいは番号を半永久的に身につけさせます。この標識を入れ墨にすれば、一目でわかり、読めなくなることもありません。マイクロチップが用いられる場合は、挿入されている事がわかるように肉眼で確認できる印を付けておきます(例えば、MやXの文字を耳の内側か太ももの内側に入れ墨にする)。 犬の標識については簡単な説明を付録4に紹介しています。 この半永久的な標識に加えて、戸外では常に首輪と標識札(もしくは識別タグ)の着用を義務付けます。この札には、飼い主の名前、住所、電話番号などの情報を記入します。首輪が盗まれることが多い国では、安いプラスチック製のテープの首輪を使用するようにすると盗難を防ぐ事ができるでしょう。飼い主についての情報を記入した札は、紐でくくりつけるか、テープで貼り付けます。犬の予防接種の状況が一目で識別できるように、札に色コードをつけることもできます(毎年色を変える)。 犬を一時的に預かってもらう場合(旅行に出るときなど)は、万一犬が逃げてしまっても返してもらえるように、一時的に預ける場所の住所などを首輪に取り付けます。 登録と標識着用のこのような義務づけを導入する場合は、同時に、ペットを捨てたときに重い罰則を課すように規定します。 

犬の登録料あるいは課金▲目次へ戻る
犬の登録料(課金)は、避妊・去勢をした犬は低い額に設定します。そうすると避妊や去勢を促進できます。また、年金生活者のように一定の「困窮」状態にある場合や、飼い主がいない犬の里親になることを了解した人も免除します。課金することにしたときは、その方針が市民にしっかり浸透するように、前もって入念な広報活動をします。そうすれば、犬を衝動的に購入することや、課金を払わなければならないとわかると一度犬を捨てて後に別の犬を入手するような事態を防ぐことができます。現在所有する犬についての課金を次の年に延納できるようにすることもできます。こうすれば、課金されるからと慌てて犬を捨てることを防ぐことができます。このような課金収入は、野良犬対策や啓発活動に還元されるようにしなければいけません。そして、課金制度を登録制度や標識着用と連動させていれば、課金逃れが一目瞭然でわかります。犬を登録するときに、標識札を行政側から配布するようにすれば、比較的簡単に実施することができます。

避妊・去勢▲目次へ戻る
避妊・去勢は、あらゆる手段で奨励しなければなりません。たとえば、啓発活動、優遇制度(避妊・去勢した犬への課金を低くする)、避妊・去勢手術への補助金の交付などがあります。避妊・去勢手術への補助金制度は地方自治体が策定しますが、動物医療関係者、地元の獣医師、動物保護団体とも連携するのが理想的です。 動物保護団体と地元の獣医師の利害が明らかに異なることから、避妊・去勢推進計画が難しいこともあります。獣医師とは、このような計画に関与することの意義を話し合い、動物保護団体には、このような計画を推進したときに個人経営の獣医師が被るであろう損失を理解してもらうようにします。 また、動物保護団体は、保護した犬を里親に引き渡すときには、必ず避妊・去勢を済ませておきます。地方自治体が保護した野良犬も同様で、保護施設から人手にわたるときまでに避妊・去勢をすませます。 野良犬対策をすすめるにあたり、安く避妊・去勢手術を提供できれば、目を見張る効果をあげることができます。実際に最近行なわれた避妊・去勢キャンペーンで、この方法が野良犬対策にいかに有効であるかがはっきり示されました。スコットランドのダンディー州での実績の報告を付録7に示します。 避妊・去勢手術をおこなう適齢期や最もよい手術方法については、獣医によって考え方が違います。この点については、「避妊・去勢に関するFECAVAの方針(1998年11月)」にまとめられています。付録8を参照してください。手術をする最終的な目的が動物の個体数制限ならば、早期の避妊・去勢には明白な利点があるというのが一致した見解です。

飼い主のいない犬が生息できる環境をなくす▲目次へ戻る
どのような地域でも野良犬の「収容能力」があり、野良犬の数は、この収容能力に達するまで増え続けるということが一般に知られています。この「収容能力」は、食べ物の量と、ねぐらとして利用できる空間の多少によって決まります。ある地域の「収容能力」を下げる一つの方法としては、清掃を徹底して餌となる食糧を減らすことです。特に、市場、食肉処理場、道沿いにある飲食店あるいは飲食店全般、ゴミ捨て場、工場、人が居住しない場所に気を配ります。

ブリーダーの認可制度▲目次へ戻る
ペットが増えすぎた大きな原因の一つとして、見境のない交配が挙げられます。営利的なブリーダーをすべて認可制にして監視することは、とても重要です。認可を得るためには、厳しい動物福祉の条件を満たさなければならないようにします(収容施設、世話、相手をしてやる、獣医の監督、運動、出産頻度などについて)。一般家庭でも、仔犬の引き取り手が未定のままで繁殖させる場合には、認可をとらせるようにします。これは、許可をとったブリーダーだけが、公に(あるいは仲介業者や販売業者を通して)仔犬を販売できるようにするということです。犬や仔犬を販売した人は、そのたびに、犬を購入した人の詳細を認可・登録を担当する関連部局に届け出なければなりません。こうすれば、登録状況なども常に新しい情報に更新できます。

販売業者の認可制度▲目次へ戻る
仲介業者やペットショップなどの販売業者も、すべて認可制にして監視下に置きます。認可を受けた販売業者は、認可された繁殖業者からしか仔犬や成犬を購入できなくなるので、登録を担当する関連部局は、繁殖・販売ネットワークを通じて犬の所在を追跡でき、頭数を把握できます。犬の販売は、地下鉄、街中の広場や市場のような公共の場では禁止します。認可を受けるには、動物福祉の基準(収容施設、世話、相手をしてやる、獣医の監督などについて)を満たさないといけません。 認可を出すための事務経費や、制度運用の経費をまかなうために、認可料を徴収します。

制度の運用▲目次へ戻る
制度は効率よく運用されなければなりませんが、同時に人道的な配慮がなされていなければなりません。認可や登録、認可されたブリーダーや販売業者に対する立ち入り検査、記録の保持といった日常的な業務のほかにも、啓発活動、避妊・去勢の推進、野犬捕獲員の配置などは、地方自治体が担うことになるでしょう。記録の集中的な管理(特に、集中管理された犬の登録簿)や、その記録照会といった依頼にも対応しなければなりません。 野良犬対策では、野犬捕獲員の仕事が基本になります。担当者を選ぶときには、動物を扱った経験、動物が好きかどうか、人格を考慮します。実際に市民と接しながら啓発活動を行なうという重要な役割を直接担うのが野犬捕獲員です。この仕事に不向きな人を配置してしまったことが原因で、捕獲員の役割が不当な評価を受けることがないようにすることが重要です。 犬が捕獲され、まずは個別に飼育しなければならない場合のためにの適切な犬舎は、地方自治体が用意する必要があるでしょう。このような犬舎を建設する際に考慮すべきいくつかのポイントと、簡単な図面を付録5に示します。必要ならば、WSPAが相談を受けます。詳細な図面の作成の援助もします。付録5には、従来の「長屋型犬舎」に代わる、飼育労力が少なくてすむ新しい「円形犬舎」の説明もしてあります。 野犬捕獲員が使用する専用車も慎重に選びます。運転席と隔絶された後部には、広くて換気がきいたスペースを確保します。そして、いつでも使えるだけの台数を用意し、車の整備も怠らないようにします。このような専用車に必要な装備を付録3に示します。 犬舎も専用車も、病気の感染予防を念頭に置いて設計・清掃をします。ウイルス性呼吸器疾患の拡大を防ぐことのできる犬舎や専用車については、付録5を参考にしてください。 捕獲は動物を思いやった方法で行ないますが、それには根気が必要で、動物の行動についての知識も必要です。 野犬捕獲員は、動物の扱いについての充分な訓練を受け、狂暴な犬でもどんな犬にもうまく対処できるようにします。犬の捕獲方法や、扱いが難しい犬や危害を及ぼす犬への対処の仕方を付録6に紹介します。 捕獲された犬が飼い犬の場合、犬を飼い主に返して、飼い主の責任についての教育を施します。野良犬センター(犬の収容施設)に収容された犬については、個々の犬について詳細なデータを記録します。飼い主が犬を放棄したら、その飼い主についての情報も記録します。できれば、写真も添付します。飼い主が飼い犬を探すときには、この詳細なデータの中から探します。収容されていた犬が飼い主に引き取られる時には、引き渡す前に罰金を徴収します(捕獲員が犬の保護に費やした労力やその他の諸経費として)。 飼い主のいない犬を保管しておく収容施設については、飼い主が犬を探しに来れるように、詳細な施設情報を市民に広く知らせます。飼い主が納得がいくまで探せるよう、犬は、最低でも10日間は一匹ずつ隔離保管します。収容されている間は、居心地の良い空間を用意し、餌と水を与えます。 収容期間が終わったら、里親探しのために地元の動物保護団体に犬を渡します。もしそのような民間団体がなければ、野犬捕獲員自身が里親を見つけるためにあらゆる手段を講じます。安楽死は、里親がみつからなかった場合の最終的な手段として考えます。この場合、ペントバルビタール・ナトリウム(バルビツール酸塩)のように、苦痛を与えない方法を用いることが肝要です。 しかし、どんな野良犬対策を立てるにしても、安楽死という選択肢を最後には残しておきます。収容施設や保管施設で預かる犬の数が定数を超えてはいけません。超えると、動物福祉の面で新たな問題が生じます。 孤立した集落などに少数の野良犬や野犬がいて、特に問題をおこすわけでもなく、里親がみつかる可能性も低い場合には、捕獲して予防接種や寄生虫駆除を行ない、避妊去勢した後に放してやるのも一つの方法です。このような場合には、病気の犬や凶暴な犬だけは安楽死させる必要があります。 犬の糞の後始末を飼い主に義務づける法律の整備は考慮に値します。犬の糞の後始末をすることを規定している条例を作るなら(例えば、特定の公園や繁華街について)、野犬捕獲員には条例にのっとって動けるような権限を与えます。飼い犬の糞の後始末をしない飼い主を、野犬捕獲員が取り締まれるようにします。 このような取り締まりで野犬捕獲員が徴収した罰金は、野良犬対策や啓発活動に還元されます。野犬捕獲員が行なう啓発活動は、地域の強い協力と連携したものでなければいけません。新たに野犬捕獲員の制度を導入すると、制度を浸透させるために、少なくとも最初のうちは捕獲員と市民が相互理解できるような話し合いなどが必要になる場合もあります。このような新しい制度の導入や、それが市民に受け入れられるようにするにあたり、動物保護団体と連絡をとることは有効でしょう。また、野犬捕獲員には、飼い主からペットを没収して動物虐待や世話の放棄をした飼い主を告訴する権限を与えるようにします。

(続く)


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