付録3) 犬を制御するための道具▲目次へ戻る
犬用捕獲棒(ドッググラスパー)
管状の長い柄の先に手元で伸縮可能な輪がついたもので、犬の頭から輪をかぶせて輪を縮めることで犬を捕獲します。使用する際には、犬が逃げないように輪をしっかりと締めますが、窒息させないようにします。使用時間はできるだけ短くします。緊急事態や犬がおとなしくなったときに即座に犬を解放できる即時解放捕獲棒もあります。
頑丈な捕獲棹(ドッグポール)
頑丈な捕獲棹ならば、人に危害を及ぼす犬も安全に捕獲でき容易に扱うことができます。これにも即座に犬を解放する機能がついています。
首輪とリード
普通の用途には、丈夫な紐か軽い鎖でできた、輪が締まる首輪(スリップカラー)とリードを合体させたものが便利です。実際にはおとなしい犬がほとんどなので、スリップカラーを頭からかぶせて装着し、リード端を持って誘導できます。
狂暴な犬に口輪を装着する
口輪紐を使わなければならない場合もあります。口輪紐は丈夫な材質の細い帯ひもか、やわらかいロープでできていて、それで普通の輪か、引けば締まる輪を作り、犬の口吻にとりつけます。まず、紐で輪を作り、結び目を上にして犬の口吻にはめ、輪を締めて紐の端を口吻の下へまわします。そこで紐の両端を交差させ、犬の首のうしろへ回して蝶結びをします。このようにしておけば、犬を乗り物に乗せるときなどに人を咬むようなことはありません。
追い込み網
広い空間で放れた犬を捕まえるのには、テニスネットのような横に長い網が役に立ちます。壁や柵に面して二人で網の両端を持って立ち、犬を誘導するトンネル状の空間を作ったり、徐々に空間を狭めていけば、簡単に犬を捕まえることができます。網の大きさは、長さ18フィート(5.5メートル)、高さ3フィート(1メートル)か5フィート(1.5メートル)です。
投げ網
接近するのが難しい犬には投げ網を使用します。投げ網は、円形の網の縁に金属製の輪を取り付けたものです。犬に網を投げると、金属製の輪の重みで、犬は逃げることができなくなります。逃げようともがくほど、ますます網に捉えられます。
狂犬病防護手袋
革でできた、高品質の機能性手袋で、手の甲の側は防護用の革が2枚重ねになっています。手の平と手首の部分はやわらかく、楽に作業ができます。人に危害をおよぼす犬を扱う際に適当です。
防護服(手袋と一緒に使用)
野犬捕獲員は、人に危害をおよぼす犬を扱うこともあります。このようなときには防護服を着用します。服の内側は金属の網になっていて、外側は犬が咬んでも破れない材質でできています。捕獲員が犬を拘束しているときに犬の気をそらせるための布片が袖とズボンについています。
犬用のわな
犬用のわなは6枚の金属製の網から成り、ボルトで固定して罠かごを作ります。かごの中には餌を置いて犬をおびきよせます。犬が餌を食べに底面の金網に乗ると、重みで扉が閉まります。
その他の器具、消毒剤
動物用長手袋
腕防護用具
そけい部防護用具
安全盾
安全ヘルメット
救急箱
回中電灯
子犬用バスケット
パルボウイルス消毒剤用容器
漂白剤(ドメストスブリーチ)
パルボウイルス消毒剤
以上の物品は下記で入手できます。
M D Components
Hamelin House
211/213 High Town Road
Luton
Bedfordshire
LU2 0BZ UK
使用する基本的な器具、およびその評価
1)リード
普通の用途には、丈夫な紐か軽い鎖でできたものを使います。輪が締まる首輪とリードが一体になったものが最適です。実際には、犬は大半がおとなしいので、首輪部分を頭からかぶせて輪を狭め、リード端を持って誘導できます。事情が許せば、後で革の通常の首輪をとりつけてリードにつなぎます。
長所:安価であり、軽く、使いやすい。
短所:犬が噛み切ってしまう事があります。
2)犬用捕獲網
長所:犬を移動させるときに安全な距離をおくことができ、口輪の装着がしやすくなります。
短所:犬をおびえさせる形状をしており、使い方を誤ると犬の緊張を高めます。また、犬に痛みを与える場合もあり、扱いにくいという欠点があります。
3)長手袋
長所:手を保護し、気分的な安心感が得られます。白癬などの病気を防御できます。
短所:物をつかみにくく、手入れが面倒です。
4)檻
長所:安全に確実に犬を運搬できます。
短所:折りたたみタイプでなければ場所をとります。また、物によっては大変重く、持ち運びに不便です。掃除が面倒です。
5)網
現場で犬を捕獲するのには、テニスネットのような長いネットが便利です。壁や柵を利用してトンネル状の誘導路をつくり、犬を檻に追い込みます。網は長さおよそ30フィート(9.15メートル)から40フィート(12.20メートル)、高さ3フィート(91.5センチ)で、建物の角や檻の入り口に片方の端を固定し、もう片方を捕獲員の車についている固定具に留めます。
長所:安全に犬を捕獲できる。
短所:もつれやすく、2人で扱わなければならない場合が多い。
6)わな
長所:餌を仕掛けて放って置けます。
短所:持ち運ぶのに複数の人員を必要とします。正しく仕掛けられないと、扉が閉まらなかったり、犬が入っていないのに扉が閉まったりします。市民の注意を引き、反感を買う場合が多いです。
7)口輪
危害を及ぼす犬には、口輪をはめる必要があります。以下に主な3種類の口輪を紹介します。
革製箱型タイプは、やや高価で犬の体格に合わせて調節ができません。また清潔に保つのが困難です。
革製紐型タイプは、箱型タイプよりも大きさの調節が簡単で、衛生管理も容易です。口吻全体を覆わないので、犬が咬み付こうとできます。箱型タイプでは犬が呼吸困難になることがありますが、紐方は、その心配がありません。
帯紐タイプでは、丈夫で長くて細い帯紐か、柔らかいロープが使われています。これで、自分で口輪を作ります。
長所:怪我をした犬が咬み付くのを防ぎ、犬を拘束するのに役立ちます。持ち運びに便利です。
短所:どの犬にも合うというわけではなく、特にボックスタイプは、清潔に保つのも困難です。やわらかい材質で作ってあるものは、はめ方が難しいです。きつすぎたり、唇が口輪に挟まって痛みを与える場合もあります。
どのタイプも、犬に傷を負わせることなく安全に装着され、装着したものは後で外さなければならないことを覚えておいてください。
8)体格が小さく口吻が短い犬の口輪
適当な長さのタオルを縦に巻いて、首の周りに巻きつけるだけで十分です。口輪を使用すると窒息死する場合があります。
車両に装備するとよいもの
リードと首輪のセット
犬捕獲器
猫捕獲器
猫拘束用檻
犬拘束用檻
担架
作業用手袋
防護長手袋
犬用檻
猫用檻
懐中電灯
足の付け根まである防水長靴
救急箱(動物用)
救急箱(人間用)
顔面防具
胴体防具
ヘルメット
餌
水
口輪
車両の換気扇
車両用信号灯
車両用照明灯
無線通信装置
付録4) 犬の標識▲目次へ戻る
マイクロチップ
バイオグラスに封入されたトランソポンダーは、受動的で、読み取り器から送られてくる信号で作動します。
マイクロチップの挿入
マイクロチップは、長さ14mm、幅2mmの米粒程度の大きさで、記録されているコード番号を専用の読み取り器で読み取れるように設計されています。マイクロチップ表面は特別な生体順応コーティングが施されており、1個ずつ滅菌包装されています。専用の注射器具で皮下組織に埋設します。痛みを伴わず、麻酔なしで挿入できます。埋設部位としては、肩甲骨の間か首の左側が一般的です。
生体へ異物を移植すると、副作用を起こしたり、埋設物が体内を移動する可能性があります。このため、FECAVAは、実態を把握するために副作用についての報告を受け付ける体制を導入しました。今のところ、報告数はほんのわずかです。
マイクロチップがペット用に初めて開発された当初、整合性のないシステムがいくつも導入されました。ヨーロッパにおける主要な基本タイプはFDX-A(FECAVA標準)とFDX-B(ISO標準)の二つですが、アメリカやオーストラリアを含む他の国では、他のタイプが使用されています。国際的には、現行の種々のタイプとは多システム対応読み取り器で整合性をとりながら、FDX-B(ISO)チップに全面的に移行するよう合意ができています。マイクロチップシステムを採用する際は、使用するシステムに合わせた多システム対応読み取り器を使用することが重要です。
マイクロチップを動物に埋設する時には、その犬がすでにマイクロチップで標識されていないことを確認します。これには体全体を走査する必要があり、次のような手順が推奨されます。
* マイクロチップを挿入する前にすること
包装に傷がついていないこととマイクロチップの滅菌が完全であることを確認します。
挿入するマイクロチップを読み取り器で走査して、コード番号が包装に書かれたものと一致することを確認します。この手順を踏めば、読み取り器が正常に機能していることの確認にもなります。
犬の体全体をゆっくり、慎重に走査して、すでにマイクロチップが埋設されていないことを確認します。
* チップ挿入直後にすること
犬の体を走査して、マイクロチップが定位置に収まり作動している事を確認します。
関連書類に記入する ― 複数の犬に同時にマイクロチップを埋設するときには、間違いを防ぐために、先に書類に記入します。
* 追跡調査訪問
定期的な検査時(予防接種など)に、マイクロチップが移動していないか、作動しているかを確認します。
マイクロチップの副作用、体内での移動、故障があれば、所定の用紙に記入し報告します。
入れ墨
耳の入れ墨
入れ墨は、耳か内腿に施しますが、耳をお勧めします。以下は、イギリスの全英犬登録センターが採用している耳の入れ墨についての説明です。全英犬登録センターが用いている方法は、他の国々で行なっている耳の入れ墨と同じです。
入れ墨の利点
初期費用も維持費も安くて済む
7mmの標準器具セット、約150ポンド/240 USドル
子犬、子猫用の5mmの小型器具セット、約175ポンド/275 USドル
50~60回分の入れ墨用染料、約 5ポンド/8 USドル
手順が簡便 ― 入れ墨を施すのに、難しい技術を必要としません。動物の扱いに慣れている人であれば、すぐに(30分以内で)習得できます。
正しく施せば、犬が死ぬまで残ります。
入れ墨は肉眼で見ることができ、耳の中ならば確認が容易で、「現場」で即座に識別できます。確認するのに犬に余計な負担をかける必要もありません。
読み取るための特別な装置も必要ありません。誰でも読み取ることができます。
入れ墨を施す
入れ墨を施す間は、犬に痛みを与えないために麻酔をかけるのが望ましいでしょう。仔犬よりも痛みを感じる度合いのつよい成犬では、特に推奨されます。 しかし、もし麻酔なしで入れ墨を施す場合には、口輪をはめ、犬を押さえて安心させるよう助手に手伝ってもらいます。
耳たぶの内側の毛を初めに刈り取り、入れ墨用の器具が皮膚に接触しやすくします。
入れ墨を施す部位を、外科消毒用アルコールを含ませた綿球でふき、古い皮膚や油分を除去し、消毒します。
消毒薬が乾いたら、入れ墨用染料をその部位に塗りつけます。
針をセットした入れ墨用鉗子が耳たぶの中央にくるように耳の中に入れますが、針が外耳道にたくさんあるひだの上に乗らないよう気をつけます。
穿刺する瞬間には、助手に合図して犬が動かないようにしっかり抑えてもらいます。
鉗子を取り出し、塗っておいた染料を入れ墨用鉗子であけた小穴にすりこみます(毛が生える方向と逆向きにすりこみます)。
入れ墨用の器具には様々な種類があり、プロの入れ墨師が使うペン型のものもあります。この場合は、標識の文字を手書きしなければなりません。 文章で書かれた手順を読んで理解しようとしても、実演を見るよりずっと長い時間がかかります。染料をすり込むまでの実際の手順は、30秒もかからないうちに終わります。
標識システムにおける必要条件
国内あるいは国内外で、個体識別に基づいた犬の登録システムを計画するときには、以下の条件を満たす必要があります。
偽造できない固有番号を犬に一生涯割り当てます。
標識が必要なすべての犬に対応できる容量のシステムでなければいけません。もし複数の国で対応させるシステムならば、容量はそれに見合ったかなり大きなものが必要です。
標識を施す手順が簡単で、犬に苦痛を与えず、安価でなければいけません。
どのようなシステムでも、国際的に同意が得られたものでなければいけません。
運用する人のミスが起こりにくいシステムでなければなりません。
入れ墨対マイクロチップ
入れ墨は、動物標識の便利な方法として長らく利用されてきて、今でもその便利さを強調する人もいます。標識方法としていまだに有効な場合もあり、読み取るのに特別な装置を必要としないという利点もあります。 しかし、国際的な統一システムを作り上げるのに必要な条件を考えると、マイクロチップの方が適当です。
首輪標識:刻印札/刻印専用機
首輪につける金属性標識札に文字を彫る刻印機があります。市販の真鍮製の円形札に刻印専用機で標識情報を刻印すれば、一目でわかる標識を犬の首輪につけることができます。
プラスチックタグ
犬の首輪につけるプラスチック製の標識札もあります。取り扱いが簡単で、耐久性もあります。
このような首輪につける標識は下記で入手できます。
MDC Components, 35/37 Hastings Street, Luton, Beds. LU1 5BE, UK.
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